技能実習制度に代わる【新制度】について
技能実習制度に代わる新制度について議論する有識者会議が開かれています。
新名称の候補は「育成技能」となっています。
つまり今後、在留資格:育成技能 となる可能性があります。 外国人労働者が、技能実習を受けて働き、特定技能へステップアップするために育成を受けるイメージでしょうか。
技能実習制度を廃止、見直しする方向性に至ったのは、実態に即した制度創設です。技能実習を廃止と言ってもただ全面的に廃止するのではなく、現行の制度に代わる新制度導入となりそうです。 人材確保と人材育成を主な目的としていて、そこが旧制度と異なります。
旧制度の目的は、開発途上国の若者を受け入れ、技能実習生の人材育成や実習生の母国への移転を図るという「国際貢献」でした。 とはいえ実態は、技能実習生を受け入れて労働力不足を補填する企業がほとんどであり、それも労働環境が厳しい業種の人材不足を補うケースが少なくありません。それで、旧制度の目的は実態に即していないと指摘されてきました。
ですから 新制度は、現状の実態に即した目的が掲げられ、一定の技能を求められる水準まで育成することを目指しています。
旧制度との違い (見通し)
技能実習▶︎最長5年
育成技能(仮)▷ 3年
技能実習▶︎ 実習期間を通じて同一企業で実習することが前提。原則、転籍不可。
育成技能(仮)▷ 就労開始から1年以上かつ、一定の日本語能力、基礎的な業務の技能・知識があると判断されれば転籍可能
技能実習▶︎ 特定技能への移行を希望する場合、3年間の実習後、同じ職種の特定技能であれば試験が免除される。 移行職種でない職種で技能実習ビザを取得した場合は,技能実習1号(1年間)のみの技能実習が認められるため,修了しても特定技能ビザ取得のための要件を満たすことは出来ない。
育成技能(仮)▷ 3年間の就労が終了した場合でも、特定技能に移行するには技能試験と日本語試験の合格が条件。不合格の場合は再受験のために最長1年、在留を延長可能
技能実習▶︎ 日本語能力水準を設定していない(就労開始前に日本語をほとんど話せない場合が多い)
育成技能(仮)▷ 企業での就労開始前に一定の日本語能力を求める。就労開始後も日本語能力が上がる仕組みを制度化
技能実習▶︎ 外国人が母国の送り出し機関に多額の手数料を払ったり借金をして来日するケースがある
育成技能(仮)▷ 企業側が手数料を一定額負担する(入国前に実習生が負担するコストを適正化)
新制度で主に示されている変更ポイントは
①人材確保が主な目的である
② 転籍(働く企業を変えること)を一定程度可能にする
ということです。
この新制度により《期待できる点》
◉外国人の長期雇用 (旧制度では、特定技能より幅広い技能実習ができたが、対応している職種が特定技能と不一致だった。新制度では、特定技能の12分野に対応した技能育成となる。特定技能に移行すれば、最長10年間働けるので、結果長期雇用も見込める)
◉日本語能力を備えた人材の確保
◉外国人の労働環境保護 働きやすさ確保 →技能実習生の失踪、トラブルを改善 (監理団体の適正化、支援体制の強化により)
◉人権侵害の防止
《懸念、心配される点》
○受け入れ企業が渡航費や日本語習得の教育費を負担することで雇用コストがかかる
○転籍(転職)制限緩和による人材流出(教育、育成した人材が地方から給料の高い都会へまたは違う産業へ流出する)
○ 技能実習生が自由に転籍できるため、転籍を斡旋する業者が出てくる可能性がある
○ 技能実習制度よりも受入れ可能な職種が狭くなる(特定技能の12分野に一貫されるため)
技能実習制度の変更は、社会の在り方に関わる複雑な問題で、海外からも注目されています。
多くの職種、多くの地域で外国人の労働力が必要とされています。 必要な労働力を補ってもらう分、来日される外国の方にとっても気持ちよく働ける環境になることを願っています。