基本はこれまで記事にアップしてきた通りで変わりませんが、
改めて、技能実習との違いのうち
よく注目されるものを簡潔に表にまとめてみましょう。
企業が外国人を雇用する要件は、
国が定めた「特定産業分野」に該当する業種・職種であること。
それ以外の詳細はまだ未定です。
育成就労から特定技能を目指す上で必要な試験の合格率は、
国が優良認定や許可を判断する指標となります。
つまり受け入れ企業は
外国人の育成や教育を求められることになります。
※※永住者とは※※
在留期間の上限・就労分野の制限 がない在留資格。
入管難民法は永住許可の要件を「素行が善良」「独立の生計を営むに足りる資産または技能」などと規定。
政府のガイドラインによると、10年以上の在留や納税などの公的義務を果たしていることなども例示。
従来の取消要件については、虚偽や不正な手段で永住許可を得たり、虚偽の住所を届け出た場合としている。
2月9日、政府は「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を開催、新制度「育成就労制度」の方針を決定しました。 最新の確定事項をまとめ、特に注視されていた【転籍】に関して掘り下げてみます!
今回提出された最終報告書の方針によると、
従来の外国人技能実習制度1号〜3号は廃止となり、新たな制度として「育成就労」が創設されます。
首相は会議で「共生社会の実現を目指し、我が国が外国人材から選ばれる国になるという観点に立ち、制度の見直しに向けた作業を進める」と述べました。
◆目的は人材確保と人材育成
◆育成期間は基本的に3年間 3年かけてより技能レベルの高い特定技能1号の水準の人材に育成する
【→特定技能1号は最長5年就労可能。】
◆外国人労働者が従事できる業務の範囲は、移行先の制度「特定技能」の「特定産業分野」に限定される。
=「育成就労」受け入れ対象分野を「特定技能」の対象分野と一致させることにより、移行しやすくする狙い。
人権侵害など法令違反や、契約時の労働条件と実態の間に相違がある場合、転籍が認められることがある。
※ 現行の技能実習制度においても、「やむを得ない事情がある場合」には受入れ先の転籍は認められているが、認められる範囲が拡大される見通し。
△△ このケースを回避するのに、受け入れ企業側は外国人労働者との間に認識のズレが生まれないよう、実態に則した正確な労働条件通知書の提示はもちろん、労働者へ行った説明の内容を記録に残す実務なども重要になってきます。△△
最初の受け入れ先で働く期間を、当面1年〜2年の間で業種ごとに設定できる。原則3年は転籍できない現状からすると、限定的ながら緩和。また、将来的にこの期間を1年とすることを目指す。
◇技能や日本語能力で一定水準以上の試験に合格することが要件。(新たに導入されるより高いレベルの試験合格)
◇税金や社会保険料を納めないなど、問題がある場合は資格を取り消せるようにすることも検討。
継続的な学習を促し、日本語能力について一定のレベルを求める。
非営利の「監理支援機関」に加え、新たにハローワークも連携して取り組む
◆名称が変わる →「監理支援機関」に。
◆審査条件が変わる →「育成就労」制度の要件に沿った許可申請が求められ、その新たな基準をもとに厳格な審査が行われる。
◆外部監査人も義務化し(これまでは任意)、中立性と独立性を確保。
過去の更新記事にも書いた通り、転籍に関する議論には今も懸念の声が多く上がっているのが実情です。
厳しい転籍制限が人権侵害や賃金不払いの問題を生んできた以上、改正は避けて通れないものですが、それでも…
・1年で転籍可となると、地方から人材流出することが目に見える。よって地方の中小企業の外国人労働者採用に関する具体策が必要。
・2年転籍不可となった場合、3年の就労期間中残り1年で受けてくれる企業がどれほどあるのか。
・これまでも「やむを得ない事情」での転職が認められているが、転職先が見つからない例が少なくない。
・求められる言語能力を達成するための学習サポートをどうするのか
⇨このように制度自体は転籍しやすさをうたっているのに、実際に転籍すると大きなリスクやデメリット、難題があるので、事実上転籍出来ないようなものではないか? という声があるのです。
また、
・育成就労制度では、転籍支援は非営利の団体にのみ託され、民間の職業紹介事業者の関与は当分認めない方針ですが、現行制度に関わっていなかった団体が、新制度で増加する転籍希望に上手く対応できるのか
・受入れ費用の負担については、転籍先の企業が転籍元の企業に対して費用を負担することなどが求められているが、費用の分担はどうなるのか
など も懸念されています。
改正法の施行は2025年以降となる見込みです。
今後の検討次第となりそうですが、新しい法律の施行前に入国した現行制度の技能実習生は、「技能実習」の在留資格で最大5年間は在留可能と見られます。
11月24日、第16回「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開かれました。
今回の会議では、現制度を発展的な解消とし、新たに「育成就労制度」を創設するとした最終報告書が示されました。
今回の報告書によって、1993年にスタートした“外国人が働きながら技術を学ぶ”技能実習制度は事実上廃止されることが決定しました。
この背景には、外国人労働者が、実態は「労働力」として扱われているのに「実習生」であることを理由に労働者としての権利が制限され、人権侵害が指摘されてきたことがあります。
国際貢献を謳った制度でありながら、現実は職場環境や労働状況が過酷だとして技能実習生の失踪が9000人超(2022年)に上ることを考えると、見直しは必須だったと言えるでしょう。
外国人材による労働力確保・育成。
3年。 一定の専門性や技能を持つよう育成し、即戦力となる人材へ。
→その後は特定技能1号への移行を目指す。
→さらにその後、「特定技能2号」の試験に合格すれば、配偶者などの帯同認められ、無期限就労可能。 つまり育成就労と特定技能を通じて、永住の道が開かれることになる。
どの職種も育成就労から特定技能に移行出来るよう一致させる。
特定技能の対象分野に限定して受け入れる(食品製造、介護、建設、農業など専門知識が求められる分野)。
技能と日本語の試験合格が条件。
段階的に制限が緩和。
同企業で一年以上就労後、一定の技能、日本語能力を満たした場合、同一業種内に限り可能(ハローワークなどが支援)。
※「都市部への人材流出の懸念がある」「1年は育成に十分な期間ではない」などの声があるため、新制度の開始に関して経過措置を講じる。
当分の間は分野ごとに転職が可能になる期間を延ばせる規定を設ける。
外国人労働者の来日手数料を、受け入れ企業側も負担する。
▶︎特定技能への準備が明確に進んでいない職種(衣類、繊維業など)はどうなるのか
▶︎転籍を認める経過措置の「当分の間」とはどれほどの期間なのか
一度は制限期間を「最大2年」に延ばせる例外規定を示したが、賛否が分かれ、今回の報告書で「最大2年」の記述は消されています。 「1年以上」という文言にとどまり、上限となる数字が書かれていないため、「長期間転籍させないことも文面上可能になる」「ほとんどの業界が2年にしてしまうのでは」などの懸念が指摘されています。
▶︎来日時負担の適切な分担がどれほどのものになるのか
現時点で、実習生の渡航費用、来日後一定期間の宿泊費、そして研修費用などを負担している企業が、これまで実習生が母国で送り出し機関などに支払っていた手数料の一部も負担することになると、金銭的な負担はさらに大きくなります。
▶︎ 支援体制が十分整わないまま新しい制度が施行されることにならないか、そうだとしたら人権保護は本当に実現するのか
新たな制度が、企業にだけ都合の良い仕組みになると、外国人にとって条件が厳しくなります。結局、不当な扱いに悩む外国人労働者の失踪を生み、実質的な問題解決に至りません。 そうなると今後、日本が就労国として選ばれなくなってゆくことも考えられます。
かといって育成する外国人の待遇を重視するあまり、受け入れ・育成コストがかかりすぎるなら人材不足に悩む受け入れ企業が抱える負担はさらに大きくなります。
企業側と外国人労働者、両者を守るバランスを保つのはとても難しいのです。
技能実習制度が始まった30年前は“選ぶ”側だった日本は今、“選ばれる”かどうかを考える立場にあります。
台湾や香港など近隣国を選ぶ外国人労働者も多くなっており、円安の逆風も相まって、すでに就労国として選ばれにくくなってきています。
現段階では様々な課題がありますが、外国人の受け入れ企業としては、待遇や職場環境を整え、 実習生が働きやすく、働きたいと思える魅力をアピールしてゆくことが求められそうです。
ところで…単に旧制度を『廃止』とするという案に対して、『発展的な解消』とするという言葉が選ばれたのには、どんな意図があるのでしょうか。 これまでの制度を単にやめるのではなく、従来の取り決めの問題点を直視し、より実態に即した良いものへ改善・発展させるための制度の再創設という印象を受けます。
今後この制度が実施される際、実習生側と企業側、どちらかに無視できない負担が強いられるなら、改めて見直されることも期待したいですね。
11月15日に開かれた政府の有職者会議で、技能実習制度を見直し、創設される新制度の名称について、「育成就労」とする最終報告書案が示されました。
新制度の目的は、労働力確保をメインとしており、特定技能1号への移行に向けた育成を目指すものです。 つまり 《人材確保と育成を目的とした就労》を念頭に置いたものなので、現行制度の名称よりも、目的に即した名称と言えるでしょう。
この会議では、
転籍を認める要件についても新たな案が出されています。
これまで議論されてきた(11月15日までに有識者会議は15回開かれています。)
外国人本人が
『❶同じ受け入れ企業で1年以上就労している
❷技能検定試験基礎級等及び日本語能力相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格
の要件を満たしていれば、2年目以降同じ分野内で転籍(転職)可能』 とする案に代わり、
『新たな条件を加えて2年未満までは転職を制限できる』とする案が出されました。
これは主に、地方から都市部への人材流出を懸念しての案です。
しかしこれまでの案より転籍へのハードルは上がるため賛否両論となり、結論に至りませんでした。
今後どうなっていくかが気になりますね。
検討途上にあるものではありますが…
転籍に関してどんな議論が続いているのでしょうか?
そもそも現行制度の転籍のしづらさ が 失踪 や 人権侵害 につながっている という観点から、転籍制度の緩和が必要とみなされています。
一年が終われば、同じ内容の仕事でより高い給与を望めるのであれば、地域や職場選びに関して、都市部が人気になることは想像に難くありません。とはいえ、懸念点はそこだけではないようです。
どんな注意点があり、それに対してどんな主張があるのかをピックアップしてみます。
1年を超えていれば本人の希望で転籍出来るとなると…
分野によっては人材育成の時間が1年では足りず、1年以上時間をかけなければ業務内容を覚えられないのではという声があります。
⇒ 分野ごとに2年を超えない範囲で期間を設定出来る案にすべきだという主張。
最初の受け入れ企業は、初期費用を負担することが前提です。
⇒一年しか働かずに転籍されると最初の受け入れ企業の負担が大きすぎるのでは、転籍先でも費用の一部を負担すべきではないかという主張。
この費用に関しては、「正当な補填」を求める声がありますが、
就労期間や育成レベル、日本語能力が様々な外国人労働者に対して、転籍先がどこまでを負担するのか、金額などを明確にするのが難しいため、何を持って正当とするのかも難しいと言えそうです。
新制度の3年という在留期間内で、仮に就労開始2年後に転籍する場合、転籍許可の審査を待つ期間や転籍先での新規労働者の講習期間(2ヶ月ほどを想定)を含めると、残りは事実上10ヶ月未満と考えられます。 そうすると、転籍先でも一年未満しか就労できない可能性も高く、そうなると、受け入れ企業にとっても外国人労働者にとってもあまりメリットがありません。結局、3年同じ企業で就労することを条件とした現行制度と変わらない状態が生じ得ると言えます。
こうして見ると、それぞれの意見がもっともらしく感じられます。
折り合いの付く結論を見出すのが難航しているのも頷けますね