訪問介護、特定技能でも可能に!
人手不足の深刻化を受けて、厚生労働省は6月19日
介護現場で「特定技能」の在留資格などで働く外国人材が
訪問介護サービスに従事することを認める方針を決めました。
利用者と日本語で十分に意思疎通できるよう
事業者が研修を行うことなどを条件とし
早ければ2025年度中にも解禁される予定です。
《外国人材のニーズ》
訪問介護現場の人手不足は厳しいものです。
介護の現場では、体力が重要となる場面が少なくありません。
若くて力のある日本人を雇いたくても、
少子高齢化で若者が少ない上に、
募集をかけても応募者がほとんどいない現実があります。
そのため、日本で働きたいと考えている外国人や
すでに日本に在住している外国人の
特に若年層を雇用することが解決策になると考えられるのです。
《これまでとどう変わるの?》
現在、外国人が訪問介護ができないというわけではありません。
しかし訪問介護業務が認められている外国人は限られており
規制緩和を求める声が多かったのです。
国内で介護サービスに従事できる外国人の在留資格は主に4種類。
①「特定技能」
②「技能実習」
③在留資格「介護」(留学などで入国後、介護福祉士の資格取得)
④EPAの枠組みで入国した「特定活動」
※EPA介護福祉士とは日本と経済連携協定を結んだ国の出身者の有資格者
このうち訪問介護への従事が認められているのは
在留資格「介護」 と 介護福祉士の資格を持つ
EPA締結国の出身者 に限られていました。
厚生労働省は19日の審議会で、
「特定技能」などの外国人材も条件を満たせば
従事を認める方針を示しました。
このたび解禁されるのは
特定技能 ・ 技能実習 ・ EPAに基づく介護福祉士 の候補者で
この3資格で介護現場で働いているのは4万6000人以上と言われています。
◇受け入れ介護事業所に求められること◇
▶ 外国人材が訪問することをサービス利用者やその家族に説明し理解を得る
▶ 外国人スタッフが日本の生活様式やコミュニケーション方法を学べる研修の実施
▶ 一定期間、職員が同行して必要なトレーニングやOJTを行う
▶ ハラスメントを未然に防止するための対応マニュアルの作成・共有、管理者等の役割の明確化
▶ 外国人介護人材の負担軽減や訪問先での不測の事態に対応が行える体制整備
◇外国人労働者に求められること◇
▶介護職員初任者研修の修了
▶介護福祉士の資格 ※EPAで入国した人は介護福祉士の資格がなくても、訪問介護に従事可
▶日本語「N4」程度の語学力
《懸念点と課題》
❶コミュニケーションの不安
介護現場特有の日常会話では使わない言葉を覚える必要があります。
高齢の利用者が方言を使う場合も少なくありません。
教科書で学んだことのない日本語に慣れていく必要があります。
また、介護サービス利用者が
外国人に対して少なからず戸惑いを感じることも想像できます。
お互いの意思が伝わらず
辛抱強さや穏やかさなどが必要な場面もあるはずです。
判断に迷う時に助けを仰ぐ場合も
優先順位を見極め的確に状況を伝える力が必要です。
言語力はもちろん、高いコミュニケーション能力が求められます。
❷他の職員が現場でサポートするのが難しい
それぞれの家庭の生活様式は異なります。
そんな中1対1での柔軟な支援が求められるので
慣れるまで職員が同行するなどのフォローが必要です。
しかし、フォロー職員を備える余裕が無いという厳しい現状があるかもしれません。
❸人材育成のための経済的負担
既に慢性的な人手不足となっている小規模事業所では
新たに外国人介護人材を受け入れることへの負担も懸念されます。
研修の期間も職員が1人取られ、受け入れる人数が増えると
さらに数名フォロー職員が取られるため人件費がかかると想定されます。
育成し、サポート体制を整えるのにも経済投資が必要でしょう。
外国人従業員の労働条件、労働環境を整えることはもちろん
介護サービスの利用者やその家族の協力・理解
そして外国人従業員と共に働く日本人従業員の協力・理解
を得ることも欠かせません。
高齢者を相手にするため、相互にコミュニケーションの難易度が上がります。
職員同士の連携やサポートも、管理者に求められる要素と言えそうです。
《期待できる点》
切実な人手不足に対する有効策として
外国人材受け入れを検討する事業所は増えています。
一概には言えませんが、
志を持って日本へやってきた外国人労働者は真面目で勤勉
そして誠実に働くことが多いです。
サービス利用者から
「いい人なのよね」
「丁寧に接してくれて嬉しい」
「嫁に欲しい」
などと気に入られるケースも少なくないようです。
「優しく丁寧に接する外国人スタッフは人気」
「認知症患者など日本人でも意思疎通が難しいが自分たちより受け入れられている」
と日本人スタッフが一目置いている施設もあります。
人と人との距離が近い仕事だからこそ
国籍に関わらず人として信頼できる人材確保が必要です。
前述の外国人同僚に一目置いているスタッフは
「自分の働き方を見直し、知識や技術向上を目指す点で学ぶことが多い」
とも言っています。
介護現場で外国人材を起用することは
労働力補填以上の可能性を秘めているかもしれませんね。